破産

債務を弁済することができない場合には,最後の手段として『破産』を選択することになります。

破産の申立てをして『免責』を得れば,原則として債務の支払い義務はなくなります。

 

 

『破産』というと非常にマイナスイメージがありますが,「経済生活の再生の機会の確保を図る」ことも目的としています(破産法1条)。

債務を弁済することができなければ,『破産』によって経済生活を再生させることを考える必要があります。

 

1破産についての都市伝説

 

破産には都市伝説のように,誤解されていることがあります。

次は,私が実際に聞いたことです。

 

①破産すると身ぐるみはがれてしまう

不動産などの価値の高い財産があれば,それらの財産は債権者への配当にあてられますが,通常の家財道具といった日常生活に必要なものまで失うわけではありません。

 

②健康保険が使えなくなる。選挙権がなくなる。

そのようなことはありません。

 

③親戚やご近所に知られてしまう。

債権者の中にそのような人がいれば,その人には知られてしまいますが,そのような人がいなければ知られることは通常ありません。

 

なお,破産の手続きの中で『官報』に住所・氏名等が掲載されますが,『官報』を年中見ている人はほとんどいないません。

 

④会社をクビになる。

会社からお金を借りていれば別ですが,通常は会社に知られることはありません。

 

なお,破産には資格制限があるため,資格制限に該当するときは別問題です。

 

⑤戸籍や住民票に破産したことが記載される

そのようなことはありません。

 

ただ,個人が法律上の行為能力を備えているかどうかを公的な機関が証明する「身元証明」という制度があります。

この証明は本籍地の役所が行うことになっており,破産手続きが開始すればこの「身元証明(書)」に破産の旨が記載されますが,免責を得ればその記載はなくなります。

 

破産手続きの開始から免責までの期間は,通常3か月程度はかかりますので,その間だけ記載されることになります。

 

⑥子供にも破産の影響がある。

特に幼い子供がいる方が心配されますが,子どもに影響はありません。

 

⑦破産すれば,一生,財産を持つことができない

債権者への配当の対象となる財産は,破産手続開始の時点での財産です。

開始後にあらたに取得した財産は影響を受けません。

 

2破産手続の流れ

 

本来の大まかな手続の流れは次のようになります。

 

申立て→破産手続開始決定・管財人選任→財産の換価→債権者への配当→免責

 

しかし,とくに財産がなければ,

 

申立て→破産手続開始決定・破産手続の廃止→免責

 

となります。

財産がなければ,これをお金に換えて債権者に配当するという手続きは必要ないわけです。

 

この場合を「同時廃止」といいます。

同時廃止の場合で,申立てから免責まで3か月程度かかります。

 

ただし,とくに財産がなくても,裁判所の判断で「管財人」が選任されることがあります。

 

3管財人が選任された場合

 

管財人が選任されれば,最低でも20万円程度の費用が必要になります。

 

「お金がないから破産するのに,何でそんなに費用が必要になるのか」

「お金がないと破産もできないのか」

といわれることがありますが,このような制度になっています。

 

 

4破産による制限

 

破産手続が開始すれば,申立人はいくつかの制限を受けることになります。

主なものは次のとおりです。

 

①資格制限

破産手続の開始によって,申立人は「宅地建物取引業者,証券会社の外交員,警備員,

生命保険募集員」などにはなれません。

 

なお,かつては破産は取締役の欠格事由とされており,取締役に在任中の人が破産した場合には,その人は取締役を退任し,破産者を取締役に選任することはできませんでした。

 

しかし,現在では取締役に在任中の場合に退任することは同じですが,破産者でも取締役に選任することができます。

 

②郵便物の転送

申立人への郵便物は,通常は破産管財人宛に転送され,破産管財人が中身を確認した後,申立人が受けとります。

 

同時廃止で破産管財人が選任されなかった場合には,この制限はないことになります。

 

③居住についての制限

破産者は,裁判所の許可を受けなければその居住地を離れることができません。

 

5免責不許可事由

 

破産には免責不許可事由が定められています。

 

①財産を隠匿した場合

②特定の債権者だけに弁済していた場合

③浪費または賭博によって過大な債務を負担した場合

④過去7年以内に免責を得ていた場合

 

などは,免責が認められません。

 

なお,免責不許可事由がある場合でも,裁判所の判断によって免責が認められる「裁量免責」という制度もあります。

 

6免責が認められない債権(非免責債権)

 

免責を得た場合でも,一定の債権(債務)については支払いを免れることができません。

その主なものは,次のとおりです。

 

①租税等の請求権

②不法行為に基づく損害賠償請求権

③子の養育費や親族の扶養請求権等

④雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権等

⑤破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権

⑥罰金等

 

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