個人再生

一定の条件を備えた個人が,裁判所に再生の申立てを行い,債務を一定の額まで圧縮し,その圧縮された額を一定の期間で弁済する制度です。

圧縮された額の支払いが終われば,それ以上の支払い義務はなくなります。

 

この個人再生では,住宅ローンについて特別の取り扱いが認められており,住宅ローンのための担保権が設定された住宅を守る(残す)方法があります。

 

個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の2つがありますが,ここでは多く利用されている小規模個人再生の概要を説明します。

 

1利用する条件

 

利用する条件は,

 

①将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること

②債務の総額が5000万円を超えないこと

③個人の債務者であること

 

です。

 

①将来において継続的に,または反復して収入を得る見込みがあること

 

ア パート・アルバイト、年金生活者

  パート・アルバイトであっても相当期間雇用が継続している実績がある場合や、

  年金生活者であってもこの要件を満たすとされています。

 

  ただし,同一家計の収入を合算した上で,債務を弁済していくことが可能でなけ

  ればなりません。

 

イ 主婦

  全くの無収入であれば、再生手続は利用できません。

  しかし、過去に働いたことがなくても、パートをはじめて弁済原資となりうる程度

  の収入を得るようになれば、再生手続を利用できる可能性があります。

  この場合には、同居の家族の収入も考慮して判断されます。

 

ウ 失業中

  まもなく就職することが確実であれば、就職後に申立てができます。

 

  就職する予定がなく、失業保険を受給しているという場合には、失業保険は受給

  期間が限られているため、再生手続は利用できません。

 

エ 生活保護受給者

  最低限度の生活を維持するという生活保護の制度趣旨から、再生手続の利用は困難

  と考えられています。

 

オ 個人事業者

  収入の間隔が3か月を超える場合や、不定期となる場合でも、収入から弁済原資を

  確保し、それを割り振ることで定期的に弁済することができるのであれば、再生

  手続を利用できる可能性があります。

  農業や漁業の方も同様に考えられています。

 

②債務の総額が5000万円を超えないこと

 

 この債務の総額からは,

 

 ア 住宅資金貸付債権(住宅ローン)の額

 イ 抵当権付の債務で,抵当権によって配当を受けることができると見込まれる額

 

 などは除きます。

 

③個人の債務者であること

 

 『個人再生』という名称からわかるように,個人事業者,サラリーマン,パートなど

 個人を対象とする制度で,株式会社などの会社は利用することができません。

 

2最低弁済額

 

個人が住宅ローンを除いて1000万円以上の債務を負うことは少ないので,債務の額が

1000万円以下であることを前提にします。

 

最低弁済額は,

 

①債務の額の5分の1

②100万円

③申立人の財産の額(これを清算価値といいます)

 

のうち,いずれか多い額です。

 

ただし,①②については,債務の額が100万円未満の場合にはその債務の額となります。

 

財産の額(清算価値)で問題となるものに,次のものがあります。

 

ア 抵当権が設定された不動産

  いわゆるオーバーローンであれば清算価値はゼロになりますが、アンダーローンの

  場合には債権額を超える価値を財産に計上することになります。

 

イ 退職金

  原則として8分の1を財産に計上します。

  ただし、間もなく退職することが明らかな場合(裁判所の判断によります)には

  4分の1を計上します。

 

ウ 保険の解約返戻金

  全額を財産に計上します。

 

エ 自動車

  初年度登録から5年を経過している場合には、清算価値はゼロになります。

  ただし、5年を経過しているときでも、外国車や排気量2500ccを超える場合には

  査定価格を計上します。

 

3弁済する期間

 

原則として3年です。

ただし,特別の事情があれば5年まで延長することができます。

 

したがって,1か月あたりの弁済額は次のようになります。

 

最低弁済額   弁済期間3年   弁済期間5年

200万円   5万5556円  3万3334円

100万円   2万7778円  1万6667円

 

4住宅を守る(住宅資金特別条項)

 

この制度の目的は、個人である再生債務者が、その生活の本拠である住宅を手放すことなく経済的再生を図るようにできるようにすることです。

 

この制度を大まかに言えば,『住宅ローンはこれまで通り支払いを続け』,『それ以外の債務について最低弁済額まで圧縮し,原則として3年で支払う』ということになります。

 

なお,住宅ローンの延滞があれば,その延滞分の支払も必要となるため,早めにご相談ください。

 

住宅資金特別条項の対象となる「住宅」といえるかどうかで問題となるいくつかの点を

ご紹介します。

 

①事業用の建物

建物のすべてを店舗として利用している場合など、事業の用に供している場合には、「住宅」に該当しません。

 

②居住していない建物

申立人が居住していない住宅は再生債務者の生活の本拠といえません。

たとえば、夫婦が離婚し、離婚後は元妻と子供だけが居住し、元夫である申立人自身は

居住していない建物は「住宅」に該当しません。

 

③住宅ローンの債務者が建物の共有者である場合

ここでいう「住宅」といえるためには、個人である再生債務者の所有する建物でなければなりませんが、共有も含まれます。

また、持分の割合も問題となりません。

 

④複数の住宅を所有している場合

生活の本拠と認められる方の建物についてのみ、「住宅」に該当すると考えられています。

 

⑤住宅の改良に必要な資金の貸付けによって生じた債権

住宅の改築・増築のための借入れであっても、住宅資金特別条項を利用することができます。

 

⑥他の抵当権(根抵当権)が設定されている場合

住宅資金貸付債権以外の債務を担保するために、他の抵当権(根抵当権)が設定されている場合には、住宅資金特別条項を利用することはできません。

 

 

個人再生の主なメリットとデメリット

 

メリット

・住宅を残す方法がある。

・破産のような資格制限がない。

・破産には免責不許可事由があり,例えば「浪費」や「ギャンブル」による債務の場合

 には免責が認められないが,個人再生にはこのようなものがない。

 

デメリット

・すべての債権者を手続に含める必要がある。

・一定の弁済資力が必要で,弁済が可能かどうかを裁判所が慎重に判断する。

・弁済期間中,弁済を管理する必要がある。

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