最近,認知症などによって判断能力がなくなってしまったお年寄りが,必要のない高価な物を次々に買ってしまう,あるいは,脳梗塞で一命は取り留めたものの意識が戻らず,財産が放置されている,といったことを見聞きするようになりました。
このような場合に,本人(高齢者など)の財産を管理し,療養看護(医療・介護など)がうまくいくように保護する(身上監護といいます)ための制度として,成年後見という制度があります。
例えば,判断能力がない状態で物を買ったとしても,売買契約は無効です。ただし,契約の相手方が契約は有効であると主張している場合,無効であることを主張するためには,裁判等の場で売買契約当時,本人に判断能力がなかったことを証明しなければなりません。
しかし,成年後見制度を利用しておけば,家庭裁判所によって選任された本人の保護者が売買契約を取り消すことができ,また,本人に代わってその財産を管理することができます。
本人の判断能力の低い順から,次の3つの類型があり,それぞれ保護者が家庭裁判所によって選任されます。
類 型 | 判断能力 | 保護者 | 申立件数(※) |
成年後見 | 低 | 成年後見人 | 28,472件 |
保 佐 | ↓ | 保佐人 |
4,268件 |
補 助 | 高 | 補助人 |
1,144件 |
最も利用されている成年後見の場合,成年後見人は,家庭裁判所の監督のもと,本人(成年被後見人)を保護するために次のような権限を行使します。
(1)財産管理の例
○預貯金の管理と必要な支払いのための払い戻し
○必要な費用の支払い
○本人が相続人である場合の遺産分割協議
○不動産の売買や賃貸借
○不動産に準じる重要な財産の処分
○成年被後見人の行った売買契約などの取消し
など
(2)身上監護の例
○介護契約などの締結
○施設などへの入所契約の締結
○処遇状況の監視や異議の申立て
など